講座では、出来る限り多くのアプローチ方法を皆様に体験して頂きたいと、これまでの私自身の指導経験によるもの以外に、私の恩師・同僚から受け継いだものや、数多くあるフランスFM教材から選んだアクティビティーを講座内容に盛り込んでいます。
私自身の経験にはもちろん、指導者研修で得たことも含まれています。今夏は特に「フランスの幼児音楽教育」の内容から、器楽・FMレッスンに活用できるものを、少しだけご紹介させて頂きました。 過去記事で何度も話題にしていますが、子どもたちの主体性を大切にしながら、ゆっくりと丁寧に学びを進めていくこの教育は、器楽学習前の素地形成に有益だといわれています。幼児音楽教育の理解を目的に受けたこの研修。私のFM指導、特にFM1年生への指導に新たな視点をもたらしてくれただけでなく、これまでのわたしの音楽教育指導観に大きな疑問符を投げかけてくれました。
教材研究講座では、FM教材「音楽の魔法 第一巻」を例に取り、フランスの子どもたちが、音楽の基礎をどのように学んでいるのかを細かくみていきます。五線譜、ト音記号、ヘ音記号、、、第一巻ではゼロからの学びが始まります。それ故に知識の詰め込みや、テクニック中心に陥りやすいFM課程1年目ですが、それら基礎もすべて、FMで大切な部分である《音楽作品と出会う》・《さまざまな楽器の音色を聴く》学習と繋げながら進んでいきます。
教材に提案されている内容と私の実際の使用例の他に、1年間かけて実施するアクティビティーもご紹介しているので、 3時間の教材研究講座で実施できるのは第4章くらいまで(全18章)。 アクティビティーは、レッスン内容の理解を助けるための補助的役割を担っています。身体の動きを用いる、歌う、創る、視覚化・言語化する、、、こどもたち一人一人が持っている、❝異なる理解の入口❞に行き着くために、多方向からのアプローチを試みます。
FM1年生のクラスで私が特に気を付けていることがあります。「こどもたちを音楽の世界に誘う」よう常に意識すること。 先に挙げた「知識の詰め込み・技術訓練に偏らないようにする」ために忘れてはいけない大切な要素です。『音楽専門教育1年目の子どもたちに、広い音楽の世界に興味をもってもらえるように、、!!』
ソルフェージュからフォルマシオン・ミュジカルと名称を変え、指導方法・内容が一新されて40年が経ちましたが、、、未だに改革前の記憶が、まるで親から子へ遺伝子と共に受け継がれているのではと疑うほど。大袈裟に思えるかもしれませんが、私が指導し始めた頃と比べると大分減ったものの、受講したことがないにも関わらず、この授業に対してマイナスのイメージを持っている子どもや保護者がまだまだ多く存在するというのは事実です。実際、改革後も昔と同じ指導を頑なに続ける指導者が多くいたことや、一部では新しい指導法(すべての学習課題のバランス)を正しく理解せずに、技術面、いわゆるソルフェージュ能力育成や筆記学習を軽視するという『FM指導法の迷走時代』が続いたことも、FMへの正しい理解を遅らせた原因の一つだと私は思います。
沖縄のみの開催となった「音楽の魔法第二巻」の教材研究講座。 第一巻で多くみられた数小節の曲や童謡に代わり、マーラーやドヴォルザークの管弦楽曲を用いた豊かな学習内容に、参加者の方々からは驚きの声が。教材に採用されている楽曲は、どれも現代の子どもたちに親しみやすい曲なので、FMをグループレッスンで指導したい方には非常にお薦めできる教材です。フランスのこどもたちとこの教材で学んでいて、気になる点を挙げるとするならば、第一巻から第二巻への少し大きすぎる一歩と、第二巻の進度のはやさ。授業では、先に述べたようなアクティビティーを取り入れ、子どもたちの反応を見ながら慎重に進めるなど、緩やかな上り坂になるように心掛けています。
※ 記事最初の写真は福岡開催「こどものFMクラス+指導者聴講 」の様子
FM講座2019夏 第三楽章に続く